応用事例

これまでに取り扱った分光イメージングユニットの応用事例や分光イメージングカメラの活用事例をご紹介します。

  1. 分光イメージングカメラによる果実内成分の測定と疑似カラー画像の作成[近赤外]
  2. 果実の障害の非破壊による判別[近赤外]
  3. 光照射ダメージを抑えた前分光方式による貴重試料(動物剥製)の測定
  4. 「波長微分表示法」~画像全体の視覚的な分光分布反射曲線の表示・風景画像を例として~
  5. 「SRS分光装置」~半透明物質の測定~
  6. 「ポータブル分光ゴニオフォトメーター」~物質のアピアランスの数値化~

1,分光イメージングカメラによる果実内成分の測定と疑似カラー画像の作成[近赤外]

6種の果実成分の分光反射率
分光イメージング画像から抽出
一定面積上の平均スペクトル

果実内に含まれる主な味覚物質6種類として、甘味成分であるブドウ糖・果糖・ショ糖、及び、酸味成分であるクエン酸・リンゴ酸・コハク酸があります。これらの物質はすべて白色固体です。
これらを近赤外領域(1300-2150 nm)の分光イメージングカメラ[SPECT-200 nir-3]にて撮影、各々の成分のスペクトル(右グラフ)を測定*1しました。肉眼では見分けることは困難な6種の成分ですが、近赤外領域の分光反射率には違いがあることがわかります。
この6種のスペクトルができるだけ離れるように3つの波長帯を選び、それぞれに青・緑・赤の色を割り振って*2画像を合成、6つの成分をそれぞれ異なる色として表示できました。(下記画像)

*1:白黒基準板をベースにして算出。白:硫酸バリウム、黒:メタルベルベット3M製
*ここでは、1470nm>Blue, 1780nm->Green, 2000nm>Redとして設定している。

■付属ソフトのカラー合成シミュレータについて

分光イメージングカメラ[SPECT-CAM-vis]および[SPECT-CAM-nir1]付属のソフトでは、取得した画像に、感度関数などをかけ合わせて合成画像を作成することが可能です。関数は任意の関数を読み込むことができ、また、関数の値はオーディオのグラフィック・イコライザーを操作するように自由に設定できます。これにより様々な色の見えをシュミレーションすることができます。

付属ソフト 画像合成の仮面

●合成カラーシュミレータの用途

      • 特徴的な感度特性の分光フィルタ設計
      • 様々な色覚による見えのシュミレーション
      • 擬似的なカラー合成

2,果実の障害の非破壊による判別[近赤外]

梨の正常果(左)と水浸果の障害果(右)

梨の障害果について、透過光を近赤外領域の分光イメージングカメラにて測定した結果を紹介します。


梨には水梨(みずなし)もしくは水侵果(すいしんか)と呼ばれる障害果があります(右画像)。これらは、外観からは判断できません。しかし、近赤外分光イメージングカメラにて透過率を測定(右下グラフ)すると、正常果と障害果には違いがあることが判りました。

梨の透過率

そこで、710nm, 760nm, 810nmにGBRの色を割り付けて画像合成を行うと、正常果では全体が均一に緑を呈しますが、障害果で黄色と黒色は不均一な画像(下記画像)となり、正常果と障害果とを、裁断せずに、判別することができました。

梨の分光イメージング画像
梨の分光イメージング画像
正常果(左)と障害果(右)

3,光照射ダメージを抑えた前分光方式による貴重試料の測定

単色光をあて、各光のもとで、
モノクロカメラにて画像を取得する

動物の剥製や美術品など貴重な試料の測定において、光照射によるダメージを最小限に抑えるたい場合は、光源にて分光する前分光方式がおすすめです。
分光器で単色の光源に設定して、各光源のもとで画像を取得すれば太陽光下での測定時の1/1000~1/10000の照射量で測定を行うことができます。
資料と撮影装置との間に分散光学系などの装置が入らないためクリアな画像が取得できますが、単色光をあてるために暗室もしくは暗箱が必要となります。

 

前分光方式分光イメージング装置の外観
左側の木製のケースが暗箱

弊社では、300-700 nmにおいて10 nmの間隔で分光できる前分光方式分光イメージングカメラを、鳥類の剥製の研究用として制作した実績があります。

前分光方式の分光イメージングカメラは特注となりますが、用途に合わせてご相談に応じます。

■測定例:鳥の剥製

鳥の剥製のカラー合成画像
一般的なヒトの見え(左)と紫外域感度を持つ色覚(右)のシュミレーション

4,「波長微分表示法」~画像全体の視覚的な分光分布反射曲線の表示・風景画像を例として~

後分光法の分光イメージングカメラは自然光のもとでも撮影できるため、風景を撮影することもできます。河川・海洋・土壌・植生などの調査の他、景観の調査にも応用できます。

ここでは、風景撮影の画像の紹介に加えて、弊社の独自技術である分光イメージング画像の波長微分法について紹介します。

分光イメージングカメラで撮影、解析した各波長の単色画像はモノクロ画像になります。下記のように波長順に並べれば明暗差は判りますが、内在する分光情報を視覚的に表現できません。
もちろん、付属ソフトの標準測定にて、任意の部位の分光分布を確認することは可能ですが、画像全体の分光情報は読み取ることはできません。

*:付属ソフトによる通常の操作や画像の2次元色彩標準測定については付属ソフトのページを御覧ください。

浜松市景観画像 ソフトによる解析画面
画像上にてROI指定した領域の分光反射率が確認できる
浜松市景観 分光イメージング波長毎画像
波長毎の画像はモノクロ画像になる

そこで、画像全体の分光分布を視覚的に俯瞰できる手法として「波長微分画像表示法」を考案しました。

N nmの波長を中心の波長と想定して、この前後波長のデータN-20 nmとN+20 nmを用いて、Blue, Green, Red に部位毎の信号強度情報を割り付けて疑似カラー化すると、波長毎画像の色は以下のように表現されます。

    • N nmに比べて短波長(N-20 nm)が高く、長波長(N+20 nm)が低い場合は、青系統の色味の画像
    • N nmに比べて短波長(N-20 nm)が低く、長波長(N+20 nm)が高い場合は、赤系統の色味の画像
    • N nmに比べて、短波長(N-20 nm)も長波長(N+20 nm)も、同じくらいの場合は、白~グレー~黒の無彩色の画像
    • N nmに比べて短波長(N-20 nm)と長波長(N+20 nm)が低い場合は、緑系統の色味の画像
    • N nmに比べて短波長(N-20 nm)と長波長(N+20 nm)が高い場合は、ピンクもしくは紫系統の色味の画像

この処理を20 nmづつずらしながら全波長分施します。これらの画像を波長の順番に並べると全画像の大まかなスペクトル形状を視覚的に掴むことができます。


下記の図は、分光イメージングカメラにて木々と空の風景を撮影して、付属ソフトによる波長毎画像への変換を行った画像(左列)とこれらの画像に波長微分表示法を施した画像(右列)です。波長毎画像はモノクロ画像でここから分光情報を読み取ることはできません。一方、波長微分を施した画像は、各画像の色味から、分光反射率曲線の形状は、440~480 nmは上昇、500~640 nmは比較的一定、660 nmで再び上昇して、680 nm, 700 nm, 720 nmは波打った形をしていることが判ります。

波長毎画像(左列)と波長微分を施した画像(右列)
波長毎画像はモノクロだが、波長微分することで、
全画像の分光反射率曲線の形状を色として読み取ることができる

 

5,「SRS分光装置」~半透明物質の測定~

SRS分光装置 模式図

分光イメージングユニットに光ファイバによる特殊光学系をカスタマイズした応用事例の1つ。

空間分解分光法[Spatially Resolved Spectroscopy(SRS)]を光学系に用いることで、半透明サンプルの分光情報から散乱係数および吸収係数を算出する「SRS分光装置」を開発しました。

社内での肌の透明度および肌の色の見えの研究に活用している他、木材の研究への採用実績があります。

他にも、半透明の物資(固体・液体)の分光情報の取得に活用できるでしょう。

SRS分光装置
SRS分光装置

●特徴

    • 非破壊
    • 半透明サンプル
    • 散乱係数と吸収係数の算出

●用途

    • 生体・皮膚
    • 農作物
    • 半透明の固体:木材・石材・プラスチック

■空間分解分光法[Spatially Resolved Spectroscopy]とは

半透明体に、光を1点から直接入射させたときの、半透明体内部にて時間とともに光が拡散する情報を一般式化した光の拡散方程式を用いて、半透明体の散乱係数と吸収係数を求める手法。
半透明体サンプルに光を直接接して入射したとき、入射光からの距離が異なる複数のポイントにて、サンプル内部からの反射光の分光情報を取得することで、空間的に異なる複数の分光情報を同時取得できる。
この値を拡散方程式に代入、連立方程式を解くことで、半透明サンプルの散乱係数と吸収係数を求めることができる。

6,「ポータブル分光ゴニオフォトメーター」~物質のアピアランスの数値化~

ポータブル分光ゴニオフォトメータ模式図
ポータブル分光ゴニオフォトメータ模式図

分光イメージングユニットに光ファイバによる特殊光学系をカスタマイズしたもう1つの応用事例。


分光ゴニオフォトメータとは、物質の光学的反射状況を測定することでその物質のアピアランス(見え)を定量化する装置であり、質感が重要な分野、例えば、化粧品や新規素材の開発などに需要のある機器です。

しかし、現在主流である据置型のゴニオフォトメータはサンプルを機器内に設置するため、サンプルの裁断が必要となることが多い。そこで、弊社ではサンプルを非破壊・非侵襲で測定できるハンディタイプのゴニオフォトメータを開発しています。

分光ゴニオフォトメータ
ポータブル分光ゴニオフォトメータ

サンプルに45°の角度から光が照射されます。このときの反射光を10~170°に渡って5°毎(合計33ポイント)にて受光するように光ファイバが設置されています。(右上図)
これによってサンプルの表面反射光の各角度における強度と分光情報が得られるので、サンプルの表面反射特性を調べることができます。

●特徴

    • 非破壊
    • ハンディタイプ
    • 表面の反射特性の数値化

●用途

    • 質感・アピアランス(見え)の評価
    • 新規素材の開発

■測定例:木材のコートの有無による表面反射の違い

測定した木材
ノンコート(左)コーと済み(右)

同じ木材を、コート剤未処理およびコート剤処理済の状態(右画像)にて、ポータブルゴニオフォトメータによって測定しました。
コート済み木材の方がより135°付近に強く反射されています(下グラフ)。このことからコート剤を塗ることで鏡面反射が強いツヤのある質感であることがわかります。

 

 

 

 

コート済み木材
表面反射光の角度別分光分布
ノンコート木材
表面反射光の角度別分光分布

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