近赤外分光イメージングカメラによる疑似カラーシュミレーション

近赤外分光イメージングカメラによる疑似カラー画像の作成~肉眼で同色に見える物質の差異の可視化~

分光イメージングの応用例として、近赤外領域の分光情報を利用した、肉眼では見分けがつかない物質同士の疑似カラーシュミレーションによる差異の可視化が挙げられます。
ここでは、肉眼では見分けるのが困難な物質について、近赤外分光イメージングカメラを用いて疑似カラーシュミレーションを行った例を3つ提示します。

  • 果実成分(白色粉末)
  • 透明プラスチック素材
  • 白色錠剤

1、果実成分(白色粉末)

果実内に含まれる主な味覚物質6種類として、甘味成分であるブドウ糖・果糖・ショ糖、及び、酸味成分であるクエン酸・リンゴ酸・コハク酸があります。
これらの物質は、化合物単体で見ると、すべて白色の粉体で肉眼で見分けることは困難です。
ここでは、これらの6種の白色粉体を近赤外領域(1300-2150 nm)の分光イメージングカメラ[SPECT-200 nir-3]で撮影、解析ソフトの「疑似カラーシュミレーション」機能によって素材の違いを色の違いとして可視化してみます。

6種の果実成分の分光反射率

まず、6つの果実成分を近赤外領域(1300-2150 nm)の分光イメージングカメラ[SPECT-200 nir-3]で撮影して取得したスペクトルは右記のようになります。

肉眼では見分けることは困難な6種の成分ですが、近赤外領域の分光反射率には違いがあることがわかります。

6つのスペクトルを比較して、差異がある波長にRGBの色を指定します。
今回は、1470nmの波長をBlueに、1780nmの波長をGreenに、2000nmの波長をRedにしました。
こうして出来上がった疑似カラー画像が下記になります。

肉眼で見ると、白色の粉末に見える6つの成分ですが、疑似カラー画像ではそれぞれに異なった色が付き見分けられることがわかります。

2、透明プラスチック素材

プラスチック素材には様々ありますが、多くが肉眼での判別は難しい場合が多いです。
ここでは、ポリスチレン(PS)・ポリカーボネート(PC)・ポリプロピレン(PP)・PET・塩化ビニル(PVC)・アクリル(PMMA)の透明な6つのプラスチック素材を近赤外領域 950-1700 nmの分光イメージングカメラ[SPECT-CAM-100 nir2]にて撮影、付属ソフトの機能「疑似カラーシュミレーション」によって素材の違いを色の違いとして可視化してみます。

6種プラスチックの分光反射率

まず、6つの透明プラスチック素材を950-1700 nmの分光イメージングカメラ[SPECT-CAM-100 nir2]にて撮影、右記のようなスペクトルを取得します。

6つのスペクトルを比較して、差異がある波長にRGBの色を指定します。
今回は、1100nmの波長をBlueに、1150nmの波長をGreenに、1180nmの波長をRedにしました。
こうして出来上がった疑似カラー画像が下記になります。

6種のプラスチック素材のRGB画像(左)と疑似カラー画像(右)

肉眼では無色透明で同様に見えるプラスチック素材ですが、近赤外領域の波長の違いを利用した疑似カラーシュミレーションによって識別でき、色にて違いを可視化できることがわかりました。

3、白色錠剤

製薬過程での異物混入検査としての近赤外分光イメージングの利用はよくあるニーズだと思います。
ここでは、白色の錠剤を8種を、近赤外領域 950-1700 nmの分光イメージングカメラ[SPECT-CAM-100 nir2]にて撮影、付属ソフトの機能「疑似カラーシュミレーション」によって錠剤の違いを色の違いとして可視化してみます。

8つの錠剤の分光反射率

胃腸薬や抗アレルギー剤、美白内服薬など身近にある白色の錠剤を集め、近赤外領域分光イメージングカメラで撮影して右記のスペクトルを取得します。

8つのスペクトルを比較して、差異がある波長にRGBの色を指定します。
今回は、1420nmの波長をBlueに、1520nmの波長をGreenに、1650nmの波長をRedにしました。
こうして出来上がった疑似カラー画像が下記になります。

8つの白色錠剤のRGB画像(左)と疑似カラー画像(右)

8つには糖衣錠も含まれており、色差として可視化されているのは、有効成分というよりは基材の違いと考えられますが、ほぼ同色にみえる錠剤の違いが近赤外領域の波長の違いを利用した疑似カラーシュミレーションによって可視化できることがわかりました。

■付属ソフトのカラー合成シミュレータについて

分光イメージングカメラ[SPECT-CAM-vis][SPECT-CAM-nir1]および[SPECT-CAM-100 nir2]付属のソフトでは、取得した画像に感度関数などをかけ合わせて合成画像を作成する機能が付いています。
関数は任意の関数を読み込むことができる他、関数の値をオーディオのグラフィック・イコライザーを操作するように自由に設定することもできます。
これにより様々な色の見えをシュミレーションすることができます。

分光イメージングカメラ解析ソフト
ハイパースペクトルカメラ解析ソフト
付属ソフト 画像合成の仮面
上段のBlue, Green, Redの画像の下のイコライザーを上下して、波長をRGBの色に指定します。

●合成カラーシュミレータの用途

      • 特徴的な感度特性の分光フィルタ設計
      • 様々な色覚による見えのシュミレーション
      • 擬似的なカラー合成

*:付属ソフトによる通常の操作や画像の2次元色彩標準測定については付属ソフトのページを御覧ください。

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